「千駄木の家」と猫

建築家になろうとした作家は、明治村に「千駄木の家」を残された。

「猫」になり街を徘徊した文学者は、「建築」を見ていたのだろうか。そこに住む「家族」を見ていたのかもしれない。

それが居場所を失いつつあった男の前にあらわれた日本の光景である。

漱石氏は文字によった築かれた空間、小説という建築、文学と言う日本の新都市空間を目指したのかもしれない。

ロンドンと千駄木の格差は、初期の作品が、「言葉の奔流」であったことを示す。そして『所有者』が帰京する日本の近代化から、やがて「所有概念」を開放する「言語」の建築(文学的創造力)をみるのである。

そして文学的な魔力は、本人には乗り移ってはくれなかったが、猫(距離感)を連れていくのは忘れなかったのである(大正モダニズムの到来)。

 

キーワード:永井荷風 谷崎潤一郎

 

参考

「建築家と小説家」近代文学の住まい    若山滋 著