歴史的事実と不完全な規範(文学と政治)

「物のあわれを知る」とは、江戸時代からある「人と人とが平和で幸福な関係を作り上げ、ひいては社会全体が平和で幸福になるために有効な精神」(つまり政治の規範)であるが、しかしそれが文学専攻かのように現代解釈されるのは、「和歌」の伝統からある「素直でやさしい心」という我が国固有の精神を、本居宣長氏が「源氏物語」に「素直な心の動き」(情)としてあらためて見直したからであろう。

そして確かにそれは不完全な規範ではあるが、それで世の中は十分平和に治まっていたという歴史的事実も確かに同等にあったからである。

 

参考

新潮日本古典集成「本居宣長集」    日野龍夫 校注