現在

吉田健一氏は言う。

万事が自明であった時代に於ては、明確な表現は努力を必要としなかった。そういう努力が必要になって来たのを最初に感じたのポオである。そしてその使命を、言語の正式な簡易化において完成したのがヴァレリー氏なのである。しかし、その平明さは他に例をみないがゆえに、かえって難解と思われるにいたるが、その表現は、特異な独創性ではないのである。彼はむしろ独創性を忌避し、求める凡てのものを既存の現実に発見しているのである。

 

ヴァレリー氏自身も言っている。

「今日の人間には現在というものがない」と。

 

参考

「精神の政治学」   ポール・ヴァレリー 著  吉田健一 訳