見渡す限り先端テクノロジーであるという幸福

本書は素晴らしいテクノロジーである。

そこには、視覚的でも頭脳的でもない恒常的な幸福感という造形がある。キュビスムの解釈に乗じて、絵画空間でありながら、チェスのゲーム空間であろうとするように、視覚の網膜より先に行かない運動感覚で幸福のプレーヤー感覚を体感できることを示す。脳を通して見ていない体感が、幸福の体感という造形である。それは仮想空間の可視化へと向かう転換が行われる。実はこれがシミュレーションという頭脳的な運動なのである。これが視覚的なものから概念への移行である。これは見たままではない、自己と世界の肯定感覚が融合している状態である。その点が身体の感覚を含めた幸福感である。この励起された知的構造は触れる前に想像し、それぞれの動きのコンビネーションを作り出している。これは方向性から無限にズレてゆく視覚的無関心(方向外)である。しかしそれは動かすことで得られる不可視の物体となる。

 

参考

マルセル・デュシャンとチェス」   中尾拓哉 著