仏教とキリスト教(図像学)

キリスト教図像では、聖母マリアに抱えられた「赤子」のキリストが中心であるが、仏教の図像では赤子ではなく、「人生」を視覚化したものがほとんどである。しかしそれを「老病死苦」の始まりとして見るのは正しくない。

これは俯瞰のまなざしであり、自己自身の人生を「先に」振り返ることで、広大な宇宙と一体化した存在として自己を見つめていたことを観念的に示している。

その例として、「病草紙」は上流階級の不安と恐れが投影されたものとの単純な見方もあるが、古い権力や対抗権力に「病」のレッテルを貼り風刺し、現実の恐怖をしばしば忘れさせてくれることを願っての表現とみることもできるからである。

 

参考

「生老病死の図像学仏教説画を読む    加須屋誠 著