二重化・対称性の破れ・不在・予想

強力な原理の重要さは、それによって「新しいことが予想できる」ことにある。予知できるのである。量子力学の哲学的意味から言えば、位置と運動量を正確に測れないとしても、その基礎は予言の能力に置かれているのである。

その理由は以下による。

「しるし」とは、一つの現象が、他の異なった現象をしるしづけるところに成立する「二重化された現象」にほかならない。しるしをしるしとして成立させるものは、しるしづける現象を、しるしづけられる現象から、分け隔てるその「差異」である。現れるものと現れざるもの(絶対他者)の登場であり、それは繰り返し二項対立の差異の「重ね合わせ」からなる差異化のシステムの総体によって「分節化」された世界にほかならない。この境位は生と死を同時にはらむ、「存在と不在」をはらむものであるから、絶対者の存在を彷彿させる。

差異はつまり「事成り」である。しかしそれを「境の境」としている限り、それは「内外」の差異を設定する「痕跡」ではあるが、名指しようのないものである。つまり「あらわれると同時に身を隠す」というような、絶対的な「序列」の存在しないものである。

スピノザ氏が「すべての限定は否定である」言ったことは、その意味で正しい。

しかしそれゆえに我々はこの「事成り」から、逆にあらゆることを予想できるのである。

 

キーワード:ファインマン 量子力学 差異化

 

参考

ファインマン物理学Ⅱ「光 熱 波動」   ファインマン レイトン サンズ 著

坂部恵集4「〈しるし〉〈かたり〉〈ふるまい〉」   坂部恵 著