司法取引(センス・オブ・ワンダー)

プラトンの対話は「司法取引」と同じであった。「二人だけ」の間での話だから、安心して心開いてよいと相手を誘導し、そこから自己認識を新たにさせて行く。こうして自己認識をあらため、自分に「正直」にあることが、世界そのものを認識として変えて行く。つまり送り込まれたソクラテスは「魂」という「密室」をつくり、そこで自己対話という内部で、告白的に再認識させてゆくのである。

「現実」とは異なる「変な世界」を設定し、世界に整合性を再編する「センス・オブ・ワンダー」が、SF小説のように世の中には必要である。

「館・屋敷を読む」ということは、なぜ建物に「権力」が象徴されたのかという「変な世界」、というセンス・オブ・ワンダー(驚き)を歴史での形で示す。

歴史の匂う都市風景は、もはや昔のままの姿ではないから、それは新感覚の発見(驚き)である。

言葉にならない過去と現在に往還するということは、歴史の罪と司法取引する人間の自己再認識の姿である。

 

参考

「アルキビアデス クレイトポン」   プラトン 著

『SF の書き方』「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録   ゲンロン企画

考古学と中世史研究13「遺跡に読む中世史」    小野正敏 五味文彦 萩原三雄 編

バルザック王国の裏庭から』「リュジェリーの秘密」と他の作品集   宇多直久 編訳

「原理」ハイゼンベルクの軌跡   ジェロームフェラーリ 著