絆(安定と制御の本質)

本書は二作とも秀逸である。幸運に恵まれた。素晴らしい「史料」がここにはある。しかしそこには「訓練」が必要だ。「科学的人間」に成長するために。

「理想とするヒーロー像を創り出すため、技術者はどのようなシステムを設計するのか?」、「何を機械に任せ、何に人に任せるのか?」、「人が操縦に成功したとき、どれだけ称賛に価するのか?逆に失敗したとき、人はどのくらい責任を負うのか?」、「事故でプロジェクトが中断された場合、人の関与の有無で復旧の速さはどれだけ異なるのか?」。アポロ計画の技術者は機械設計にどのように人を組み込んだのか?人と機械の境界線は計算技術だけでは成り立っていない。

航空工学で「安定性」についての合意を得るには時間がかかった。「安定性」と「制御特性」は相反する、という「目的」を持っているからだ。機体が安定なほど、その均衡から外れるためには「大きな力」を必要とする。したがって制御しにくい。逆に制御特性が良いほど、すなわち操縦しやすいほど、機体は不安定になる。戦闘機は旅客機より反応が良いが操縦するのは難しい。自動化と制御の問題はこれからの人工知能と都市計画と自動車工学の射程でもある。

人類最大の友は有能な兵士だろうか。危機的状況のなかで人(隣人)はパニックにならないのだろうか?操縦不能になるのは人だろうか機械だろうか。正確で性能ある機械をパニックに陥った人が操る時、それはその人を救うのか、それとも機械の正確さはより大きな人類の危機をもたらすのか、それは昔からの議論であるが、私がそこに登場させるのは「犬」の科学である。「本質」を浮き彫りにするためだ。

隊の先頭、ウォーキング・ポイントにいる犬は人間が作り出した「危険の意味」を知らされていながゆえに先頭を行く。しかし犬が戦争に行くとなると「戦争という異常」が「少しだけ身近」(安心・安全・癒し)に解釈できる。

しかし犬の感情の本質は科学である。それは人間以上に視覚と聴覚と嗅覚を科学的に「量化」しうるからだ。犬はこうして危険物も嗅ぎ分けるが人の感情不安をもすばやく読み取るのだ。作業ロボットのようだが、感情を数量化できる能力から犬は安定し正確である。犬が人間に感情移入でき、大切な仲間として私たちを慰めようとしているのは、この訓練された安定と制御の科学による。

 

 キーワード:科学から科学的人間へ 絆と信頼 危険探知 感情量化 人間性制御 安定的日常化

 

 

参考

「デジタルアポロ」月を目指せ 人と機械の挑戦     デビッド・ミンデル 著

「戦場に行く犬」アメリカの軍用犬とハンドラーの絆    マリア・グッダヴェイジ 著