「客観とエポケー」の融合時代

古典物理学は、確かに「客観」を与えた。誰もが同じ判断をすることで民主主義(数の論理)や経済(大量生産と大量消費)を有効化した。「判断の危険」は遠ざけられたかに見えた。しかしそこにはポピュリズムが生まれ、劇場国家という、「誰もが同じ思考を持つことから生じる危機」が誕生したことも事実である。

本書はこの客観の揺らぎのなかで、さらなる「科学の拡張」を説く。すでにある、固定化され積み重ねられた客観を、越えなければならない時代(主観的個人の多様な時代)が来たと。誰もが「同じ考え」(同じ観測者の立ち位置)では、その影響下、支配下あるいは他者の影響下では、あらたな発見はもう望めないということだ。これは新時代の個性や独創性の再帰を望むものでもあるが、量子力学的世界観が教えるものは、「生活世界」を再び括弧に入れる「現象学的エポケー」というあらたな個人啓蒙の勧めでもある。

「未定から確定への移行」はそれほど単純に「見える」過程ではない。それは世論・政治においても、観測者のどの段階で、どのように起きているのかを考えると、「物理学の世界」だけで起きている事とは言えない。量子力学は「意識」の領域にも確実に存在するからである。

 

キーワード:生活世界 意識 脳科学 神経科学 生命活動 

 

参考

「エキゾティックな量子」不思議だけど意外に近しい量子のお話     全卓樹 著