物数寄

物との付き合い方の、数奇な運命を、本書は語る。

好きとは、物と隙、現前と不在、実と虚の間を自在に往来するものである。そしてその物の骨董とはまさに、「往生際」の「トポス」である。偽物の潜在性は内在的なサスペンスであり、物理的なキズは外在的な欠損を示す。

川端康成氏の孤独感は、「もう死んだ者の切実な命」を、骨董とする。これは彼を生の世界にかろうじてつなぎとめる空虚な媒体(メディウム)となる。キリスト教的な受肉は象徴し、再受肉=転生の物語となる。

小林秀雄氏は、「上手に思い出す事」として、骨董に寄り添い生き、その批評は「歴史を見る活眼」となる。

 

参考

「物数寄考」骨董と葛藤    松原知生 著