代替・拡張・転倒

本書は名著である。本書の意義はさらに大きい。

偶像崇拝」は、異教徒を違った言葉で表現する。しかし現代、それが異なった偶像崇拝の概念をつくりだす。偶像崇拝が神の種類の問題ではなく、人間と人間の関係という制度の範囲内では「罪」だからだ。

ニーチェ氏は「神の否定」から「自己崇拝」の関係をより深く「逆転」させる。異教主義の現代的使用を「代替・拡張・転倒」と位置付けるのである。実は偶像崇拝は、昔の原始的な種族だけにみられる信仰形態ではなく、物質文明やテクノロジーを絶対なものとして無意識に崇拝している現代人にも当てはまる信仰形態なのである。

ゆえに「偶像崇拝の禁止」は、そうした錯誤や錯覚に陥っている人間に、いまでも警鐘を鳴らす強力な手段になりうることを示す。

偶像崇拝とは単なる「宗教的対立」ではなく、ニーチェ氏の「現代的転倒」の意味を含め、「生活意識上」でも、代替・拡張され、重大な問題(対立と差別)をはらんでいるのである。

 

  ー 生政治の紋切り型について ー

 

参考

偶像崇拝」その禁止のメカニズム   M・ハルバータル/A・マルガリート 著