「世界との通路」とその自覚について

本書は、内容以上に「言語」の才能が冴える。

 

現在の演劇はすでにほとんど世界との通路とは自覚されていない。その意味で現代は、精神の新しい画期を作り出すための参照系とはならないが、それでも鈴木忠志氏・浅利慶太氏・千田是也氏はちがったのである。いまあるすべて日本の製品も同様だ。グローバル時代なのに覇気がない。世界を驚かす創造は昔より可能なはずなのに。

 

歴史に忠実だった千田是也氏は、ロシア革命が世界を変えたように、近代アヴァンギャルドの芸術家運動に世界を変えるイメージを持った。

浅利慶太氏は日生劇場とミュージカルとの遭遇で劇的転換をむかえた。それは後の千田是也氏も同様で、アメリカとソ連ダブルバインド(希望と恐怖)のアンビバレンス(両義性)を意識した時代のものだった。

そんな中で鈴木忠志氏はその矛盾を体現した。演劇を介して想像の世界を変える夢への覚醒は、政治とは別の位相にあるものと感知されたのである。高度成長期と不条理なものから出発した鈴木忠志氏は、そこで「虚構の身体」という「方向」を発見したのである。

 

参考

「戦う演劇人」戦後演劇の思想 鈴木忠志 浅利慶太 千田是也     菅孝行 著