紋切り型辞典(対称性)から非対称性の展開へ

手習いとして、川端康成氏と小林秀雄氏は最適である。そこには、ある「美学」がある。

 

ミラン・クンデラ氏は、作家がマスメディアによって「公的」に作風を縛られると、ただ舞台の証明を浴びるだけの存在になると考え、フローベール氏の「紋切り型辞典」の企てを評価した。紋切り型の決まり文句を収集するだけの無ー思考(対称性的応答)を批判したのである。

 

三島由紀夫氏も自分の小説を「社会派」という言葉でくくられるのを拒み、自らの作風を「事件小説」とし、ただ社会(風俗)を描くだけのものとし、旧型インテリ風の言説を紋切り型として拒否した。

 

翻訳家である稲垣直樹氏もまた、翻訳定義を自然的等価(一対一の紋切り型)ではなく、方向的等価(非対称展開)と位置づけ、しかもそこに「比較第三項」(批評の意味)を盛り込み、小林秀雄氏の「批評の美学」のような「目的言語」を目指した。

 

   ー 日本における森鴎外氏から夏目漱石氏への必然的流れを見る ー

 

 

参考

「小説の技法」   ミラン・クンデラ 著

新装版「作家論」  三島由紀夫 著

「翻訳技法実践論」『星の王子さま』をどう訳したか  稲垣直樹 著