「全能」の根源は「無力」である(全能の逆説)

本書は青くさい議論ではない。

逆説的だが、原子力の問題そのものによって核戦争という問題からわれわれは遠ざけられているからだ。我々は原子力時代をすでに経験していると思い込んでいる。しかし「われわれが全能なのは、われわれが無力だからだ」。われわれが全能であるのは、われわれが(自分の作った自動機関と比べると)無力だからである。ゆえにわれわれの全能の根源は無力である。再び「神前にある人間」に戻るかのようだ。人工知能もまたわれわれを「超える」ことで、人間は生産的に無力になるという懸念がある。これは人間が「全体主義的支配」に飲み込まれてゆくことへの警告であり、システムが歴史の主体になって、人間が歴史に「遅れをとってくる」という意味で、それは時代遅れと評され、人間の退化や劣化と表記されるのである。

 

参考

「核の脅威 原子力時代についての徹底考察」 ギュンター・アンダース 著